(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】第2936858号

(24)【登録日】平成11年(1999)6月11日

(45)【発行日】平成11年(1999)8月23日

(54)【発明の名称】飛翔体の推進装置

(51)【国際特許分類第6版】

F03G 3/00

B64G 1/00

F03H 5/00

F42B 15/00

G05D 1/00

【FI】

F03G 3/00 E

B64G 1/00 F

F03H 5/00 Z

F42B 15/00

G05D 1/00

【請求項の数】2

【全頁数】27

(21)【出願番号】特願平3−356180

(22)【出願日】平成3年(1991)12月24日

(65)【公開番号】特開平5−172040

(43)【公開日】平成5年(1993)7月9日

【審査請求日】平成7年(1995)11月27日

(73)【特許権者】

【識別番号】000004237

【氏名又は名称】日本電気株式会社

【住所又は居所】東京都港区芝五丁目7番1号

(72)【発明者】

【氏名】南 ○成

【住所又は居所】東京都港区芝五丁目7番1号 日本電気株式会社内

(74)【代理人】

【弁理士】

【氏名又は名称】八幡 義博

【審査官】 山岸 利治

(56)【参考文献】

【文献】特開 昭63−73302(JP,A)

(58)【調査した分野】(Int.Cl.6,DB名)

F03G 3/00

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】 飛翔体(航空機、有人ロケット、宇宙船等)の内部及び当該飛翔体周辺の空間の曲率成分に変化を与えるための強磁場を発生するため球面状の磁場を発生する主超電導マグネットを超電導材料からなる球状体の内部に配置した磁気エネルギー発生手段と; 前記磁気エネルギー発生手段による強磁場の発生態様を制御して前記空間の曲率成分の変化を局所的に準反対称に制御し、該空間に発生した重力と等価な空間歪み力を当該飛翔体の推進力とするための制御手段であって、前記主超電導マグネットの片側の半球状磁場内に逆極性の磁場を発生する補助超電導マグネットを配置し、両超電導マグネットの励磁電流パルスの繰り返し周波数を変更制御する磁気制御手段と; を備えたことを特徴とする飛翔体の推進装置。

【請求項2】 飛翔体(航空機、有人ロケット、宇宙船等)の内部及び当該飛翔体周辺の空間の曲率成分に変化を与えるための強磁場を発生する磁気エネルギー発生手段と; 前記磁気エネルギー発生手段による強磁場の発生態様を制御して前記空間の曲率成分の変化を局所的に準反対称に制御し、該空間に発生した重力と等価な空間歪み力を当該飛翔体の推進力とするための磁気制御手段と; を備えた飛翔体の推進装置であって、前記磁気エネルギー発生手段が、良電導性流体たる液体金属を収納する液体金属貯蔵容器と; 強磁場の発生容器たる球状のブランケットと; 前記液体金属貯蔵容器からの液体金属をそのまま流体として、または噴霧状の流体粒子として前記ブランケット内に注入するノズルと; 前記ブランケットの対向する壁部に対向配置され当該ブランケット内に初期磁場を生成する1対の超電導マグネットと; 前記1対の超電導マグネットの配置方向と直交する両側の前記ブランケット壁部に対向配置され磁束を凍結した流体粒子または流体にパルスレーザ光を照射する1対のレーザ光源と; 磁束凍結を解除された流体粒子または流体を前記液体金属貯蔵容器へ還流させるための排気ポンプと; を備え、前記磁気制御手段が、前記1対の超電導マグネットへの励磁電流制御、前記1対のレーザ光源の非対称制御及び流体粒子または流体の注入から排気までの過程を高速に繰り返す制御等を行うものであること; を特徴とする飛翔体の推進装置。

【発明の詳細な説明】

【0001】

【産業上の利用分野】本発明は、飛翔体(航空機、有人ロケット、宇宙船等)の推進装置に係り、特に強力な磁気エネルギーによって空間の曲率成分を制御し、空間自体に発生する空間歪み力を推進力とする空間駆動型の推進装置に関する。

【0002】

【従来の技術】従来の飛翔体の推進方式には、プロペラによる空気流の反作用による方式、ジェットエンジンやロケットエンジン等の内燃機関による噴射ガス流による方式、プラズマ流及びイオン流の反作用による電気推進方式等が知られている。また、ロケット推進方式では、化学ロケット推進方式が既に実用化されている他、人工衛星の姿勢制御用として実用化されている電気推進方式(電気加熱推進、イオン推進、プラズマ推進等)のロケット推進への適用が検討され、構想段階の方式として原子力推進方式(原子力熱推進、核分裂パルス推進、核融合パルス推進等)や非化学ロケット推進方式(太陽加熱推進、ラムジェット推進、レーザー推進等)がある。

【0003】

【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の飛翔体の推進方式は、何れも作動物質を高速度で後方へ噴射しその反作用で前方向への推力を発生する反動推力(運動量推力)によるものであるので、得られる速度に一定の限界がある。

【0004】即ち、最終到達速度は、作動物質の噴射速度と質量比から理論的に決定されるので得られる速度の限界は低いところにあり、任意の高速度は得られない。例えば、化学ロケット(噴射ガス流による推進方式)では数10km/秒、電気推進では数100km/秒が限界であり、これ以上の高速はえられない。但し、推力重量比(加速性能)でみると、化学ロケットでは100程度であるのに対し、電気推進では10-5〜10-3と非常に微弱である。それ故、化学ロケットは、燃料の積載量によって作動時間は短いが、地球の1Gの重力圏を脱出できる唯一の推進方式となっている。

【0005】また、飛翔体の運用では、空中静止状態からの急発進、急停止、全方向への直角旋回等各種の動作を任意に行える必要があるが、従来の推進方式では原理的にも技術的にも不可能であり、仮に実行するとすれば慣性力の巨大な加速度のため搭乗員等が破壊される事態を招来する。慣性力を理論上消し去ることができないからである。

【0006】さらに、騒音の発生が避けられず、噴射ガスに放出と相俟って環境上有害である。特に、原子力推進では放射能の飛散が不可避である。そして、燃料の爆発を利用するので、安全性上も問題である。

【0007】次に、ロケットやスペースシャトル等から明らかなように、巨大な積載量の燃料の上に数人の搭乗員が積まれているようなもので、搭乗員の占める容積比率は数%から10%程度と極めて少なく、飛翔させたい対象(人間、貨物等)の重量や容積に制限がある。

【0008】最後に、宇宙船には、宇宙空間を高速度(数100km/秒〜数万km/秒〜準光速)で航行できる能力と、惑星−大気圏を自由に水平、垂直の任意の姿勢をとって飛行でき、容易に離着陸できる能力と両者を保有する必要があるが、従来の推進方式では不可能である。

【0009】本発明の目的は、飛翔体の推進に好適な新規な推進原理に基づく推進装置、即ち、強力な磁気エネルギーによって空間の曲率成分を制御し、空間自体に発生する空間歪み力を推進力とする空間駆動型の推進装置を提供することにある。

【0010】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明の飛翔体の推進装置は次の如き構成を有する。即ち、第1発明の飛翔体の推進装置は、飛翔体(航空機、有人ロケット、宇宙船等)の内部及び当該飛翔体周辺の空間の曲率成分に変化を与えるための強磁場を発生するため球面状の磁場を発生する主超電導マグネットを超電導材料からなる球状体の内部に配置した磁気エネルギー発生手段と; 前記磁気エネルギー発生手段による強磁場の発生態様を制御して前記空間の曲率成分の変化を局所的に準反対称に制御し、該空間に発生した重力と等価な空間歪み力を当該飛翔体の推進力とするための制御手段であって、前記主超電導マグネットの片側の半球状磁場内に逆極性の磁場を発生する補助超電導マグネットを配置し、両超電導マグネットの励磁電流パルスの繰り返し周波数を変更制御する磁気制御手段と; を備えたことを特徴とするものである。

【0011】第2発明の飛翔体の推進装置は、飛翔体(航空機、有人ロケット、宇宙船等)の内部及び当該飛翔体周辺の空間の曲率成分に変化を与えるための強磁場を発生する磁気エネルギー発生手段と; 前記磁気エネルギー発生手段による強磁場の発生態様を制御して前記空間の曲率成分の変化を局所的に準反対称に制御し、該空間に発生した重力と等価な空間歪み力を当該飛翔体の推進力とするための磁気制御手段と; を備えた飛翔体の推進装置であって、前記磁気エネルギー発生手段が、良電導性流体たる液体金属を収納する液体金属貯蔵容器と; 強磁場の発生容器たる球状のブランケットと; 前記液体金属貯蔵容器からの液体金属をそのまま流体として、または噴霧状の流体粒子として前記ブランケット内に注入するノズルと; 前記ブランケットの対向する壁部に対向配置され当該ブランケット内に初期磁場を生成する1対の超電導マグネットと; 前記1対の超電導マグネットの配置方向と直交する両側の前記ブランケット壁部に対向配置され磁束を凍結した流体粒子または流体にパルスレーザ光を照射する1対のレーザ光源と;磁束凍結を解除された流体粒子または流体を前記液体金属貯蔵容器へ還流させるための排気ポンプと; を備え、前記磁気制御手段が、前記1対の超電導マグネットへの励磁電流制御、前記1対のレーザ光源の非対称制御及び流体粒子または流体の注入から排気までの過程を高速に繰り返す制御等を行うものであること; を特徴とするものである。

【0012】

【0013】

【作用】次に、前記の如く構成される本発明の飛翔体の推進装置の作用を説明する。本発明の推進方式は、通常のジェットエンジン、ロケットエンジンのようなガス流体噴射による反動推力(運動量推力)によるのではなく、空間の場の歪みによる一種の圧力差を推力とする圧力差推力による空間駆動型の推進方式である。その概要は次の通りである。

【0014】連続体力学上、場を充填する物体は場の量の勾配により作用を受ける。例えば、大きさのある粒子は静水圧の距離的勾配により正味の圧力を受けて移動する。場の量としてこの量(静水圧)は場所の関数であり、この圧力勾配が重要な駆動力となる。圧力勾配の場にある物体は正味の圧力差を受けて移動する。圧力0の場にある物体は静止状態を続け移動しない。この物体が、物体の周辺に局所的に反対称な一方向の圧力場を生成したとする。この状態で、物体の空間への圧力場生成作用と生成された圧力場による物体への作用とは平衡しているために、場からの圧力は在るものの物体は移動できない。

【0015】次に、物体の空間への圧力場生成作用を瞬断する。空間は本作用が瞬時に取り除かれても、瞬間的に元の自然な圧力0の状態に戻るのではなく、圧力0に戻るまでに有限の時間を要する。つまり、空間は有限の歪み速度を有する。この有限の時間領域において、物体と空間の場は独立であり、物体は圧力の場の中にあり、場の圧力を受けて移動する。本圧力は圧力勾配における正味の圧力差と等価である。この圧力場生成作用のON-OFF過程を高速に繰り返すことにより、連続的な推力を得る。エネルギー論的には、物体の圧力場生成作用により周辺の空間が局所的に変形し、本変位作用により空間に歪みという形で貯えられた歪みエネルギーが、圧力場生成作用の瞬断により解放され、一部のエネルギーロスを除く空間の歪みエネルギーが解放時に物体に運動エネルギーとして与えられることになる。ここで、空間の場の圧力とは、強力な磁場により生成される空間の曲率から発生する表面力である。

【0016】この推進原理は、空間に関する新しい概念と空間の幾何学的性質から決定される空間の力学構造に関する理論から導出されるものである。即ち、ここで用いる「歪み」とは連続体力学上で定義される歪みの意であるが、空間の歪みは空間の曲率によって発生し、空間の曲率は物体の質量や磁場によって生成される。そして、物体質量による空間の歪み場は重力場である。磁場は空間の曲率(歪み)という媒介を通して重力場と等価になる。

【0017】そこで、本発明では、飛翔体を含む空間領域の動的な曲率変化が局所的となるように磁気エネルギー発生手段の発生する強磁場の発生態様を磁気制御手段によって制御し、空間自体に発生する空間歪み力(具体的には、曲がった空間が曲率ゼロの平坦な空間へ戻る遷移過程で歪んだ空間の場から得られる力)を推進力とする。これを別の観点から説明すると以下となる。空間が曲がると曲がった空間領域に加速度の場が形成される。加速度の場にある質量体はニュートン第2法則による推力を受けて移動する。

【0018】従って、この推進方式は、空間の場の歪みによる近接作用(直接的な作用は場から受け取るとする概念)を利用した一種の圧力差推進方式、または、空間の歪みにより発生する力は重力と等価であることから重力場推進方式と呼べるものである。推力が飛翔体を含む空間領域全体に浸透する体積力(体積要素内部に一様に分布し体積要素の質量に比例する力で、重力や慣性力も体積力)であるので、慣性力を受けないこと、理論的に準光速を短時間で達成できること等、飛翔体の推進方式として優れた特徴を有する。以下、本発明の背景を理解するに必要な空間の力学構造(空間の歪み理論)、推進作動原理等を説明する。

【0019】空間の歪み理論

I.空間の基本概念

(1)空間は無限の連続体であり、その構造はリーマン幾何学の枠組みにより決定される。

空間には唯1つの歪みのない自然な状態(平坦な空間)があり、歪みを起こす外的な物理作用が全て取り除かれたとき、空間は常に歪みのない自然な状態に戻る。そして、空間の隣接する点はいかなる物理作用の下でも隣接点として残り、その変化は連続的であり、変化後も連続体であるという基本条件を満たす。この仮説を満足するという意味で連続体である。連続体としての空間はリーマン空間であり、その構造はリーマン幾何学に従う。

【0020】(2)空間の曲がりは純粋に幾何学的な量である。この幾何学的な量を現実の力と関連付けるためには、連続体力学上の歪みの概念が重要である。歪みの場は、幾何学的な量と現実の力学との接点である。

【0021】(3)空間の局所的な幾何学上の構造の変化を空間の歪み状態とみなす。幾何学上の構造の変化とは曲率成分の変化であり、曲率成分0の平坦な空間(ミンコフスキー空間)から曲率成分を伴う本格的に曲がった空間(リーマン空間)への移行を示す。空間が曲がっているということと空間が歪んでいるということとは本質的に同じ内容である。

【0022】(4)空間の歪みは空間の一種の変形を表すことになり、空間を充填している物質点は空間の変形により作用を受けることになる。変形としての連続体力学上の概念をリーマン幾何学上の概念と関連付ける重要な解析手法となる概念はベクトルの平行移動である。曲率が0でないと空間の曲がりによってベクトルの平行移動の結果は途中の経路によって異なるし、またベクトルを曲面上の閉曲線に沿って一周させてもベクトルは最初の値には戻らない。曲率が0の場合、本現象は発生しない。

【0023】(5)物質は連続的な方法で空間内のある領域を占める。ここで空間と物質とは明確に識別されねばならない。物質は空間を充填し、移動することにより空間の領域を占有する。つまり、物質は空間を移動可能であり、空間を移動することにより空間を充填する。

【0024】(6)空間の連続性を保つために、空間を充填する物質点の移動速度は空間の歪み速度を越えることはない。

【0025】II.リーマン幾何学とは

リーマン幾何学とは、曲がった空間を取り扱う幾何学である。即ち、本論では曲がった空間としての4次元リーマン空間を対象とし、空間の曲率を重視する。対象とする現実の物理空間は空間座標3軸(x=x1 、y=x2 、z=x3)と時間座標1軸(w=ct=x0)との4次元リーマン空間である。これをxi(i=0、1、2、3)と表記する。

【0026】この4次元リーマン空間での点xi とその隣接点xi +dxi での2点間の無限小距離dsの2乗は、数式1で与えられる。gijは、計量テンソルと呼ばれ、空間の幾何学的性質を全て規定する量であり、一般に場所の関数である。リーマン幾何学の出発点は、2点間の無限小線素を規定する計量テンソルgijであり、このgijの組み合わせからリーマン接続係数(数式2)、更にはリーマン曲率テンソル(数式3)が規定され、全空間の幾何学が定まる。

【0027】

【数1】

【0028】

【数2】

【0029】

【数3】

【0030】次に、リーマン空間の性質は以下の通りである。

(1)平坦な(曲がりのない)空間は、リーマン曲率テンソルの全成分は0である。曲がりのある空間は、リーマン曲率テンソルの成分は0でない。0でない成分が1つでもあれば、空間は本質的に曲がっている。

【0031】(2)空間が平坦であるための必要十分条件は、リーマン曲率テンソルの独立な20個の全成分が0である。

【0032】(3)平坦な空間では、計量テンソルは定数値をとる。曲がりのある空間では、計量テンソルは場所の関数となる。つまり、平坦な値(ミンコフスキー計量)から計量テンソルがずれることになる。

【0033】III.空間の基本構造式

構造変形前の空間領域Iの任意の2点間の線要素をds=gi dxi とすると、無限小距離は、ds2 =gijdxi dxj となる(図1の左)。そして、外的な物理作用(物質又は電磁エネルギーの存在による影響)によって空間の構造的な変形後の空間領域IIでは、同一空間領域の同一の2点間を結ぶ線要素は新しく変化し、長さと方向において異なるので、ds′=gi ′dxi ′となり、無限小距離は、ds′2 =gij′dxi dxj となる(図1の右)。gi ′は基底ベクトルgi が変形して移ったものであり、gij′は変形後の座標系の計量テンソルである。

【0034】変形の程度は、任意の2点間の距離の変化として表せられるので、数式4となる。

【0035】

【数4】

【0036】つまり、空間の幾何学的な構造上の変形の程度は、計量テンソルの変化rij=gij′−gijの量によって記述される。この変形の状態は各点に関して変形前の位置から変形後の同一の座標点が占める位置へ伸ばした変位ベクトルuを用いて表すことができる(数式5、同6)。

【0037】

【数5】

【0038】

【数6】

【0039】上記式を用いて、変形後の線要素の2乗ds′2 を作ると、数式7となる。

【0040】

【数7】

【0041】数式7において、2次の微小項uk ik j は、変位が小さいと充分無視できる。ここで、「:」の記号は共変微分を示す。

【0042】共変微分とは、数式8に表記され、普通微分Ai,j とは第2項の分量だけ異なる。平坦な空間では、リーマン接続係数Γr ij=0なので、Ai j =Ai,j 、つまり、1階テンソル(ベクトル)Ai の共変微分と普通の微分とは一致する。曲がった空間では、普通微分を補正する必要があり、共変微分として表記する。従って、場の量の微分が含まれるときは共変微分として表記することが一般性を与える。

【0043】

【数8】

【0044】現実の物理空間は、歪みのオーダーの試算から微小変位として扱え、2次の微小項は無視できるので、数式9となる。

【0045】

【数9】

【0046】一方、連続体力学上の歪みの概念として、歪みテンソルeijは、数式10で与えられるので、数式11の関係式が得られる。

【0047】

【数10】

【0048】

【数11】

【0049】数式11は、空間の幾何学的な構造上のある種の変形を歪みの概念によって示す方程式である。物質等の存在により、計量テンソルがgijからgij′へ移行すると歪みの場eijが発生することを示す。

【0050】IV.空間の基礎方程式

変形としての連続体力学上の概念をリーマン幾何学上の概念と関連付ける重要な解析手法はベクトルの平行移動の概念である。リーマン空間上のベクトル平行移動の概念を拡張することにより数式12が得られる。

【0051】

【数12】

【0052】数式12において

【0053】

【外1】

【0054】は、リーマン曲率テンソルである

【0055】

【外2】

【0056】の性質から反対称テンソルであり、変位場の回転を示す回転テンソルとなる。空間が曲がっていると、空間の領域内に変位(場)の回転が生ずる。

【0057】さて、連続体力学上で上記回転テンソルと、歪みテンソルを表す

【0058】

【外3】

【0059】は回転面に対する垂直方向の変位勾配に関する次の微分方程式(数式13)を満たす。本方程式は、平坦な空間では微分の順序が可逆ということで成立する。

【0060】

【数13】

【0061】そして、数式13の微分方程式を曲がったリーマン空間に拡張するためには方程式を共変形に修正する必要があるが、それは数式14が成立するという条件下で可能であり、数式15の共変微分方程式が得られる。

【0062】

【数14】

【0063】

【数15】

【0064】次いで、この数式15は、回転テンソルの変位勾配が歪みテンソルの変位勾配の差分に相当することを示すが、その両辺に空間の性質を規定する4階テンソルを表す

【0065】

【外4】

【0066】を形式的に掛けて、数式16、同17を得る。なお、連続体力学上の応力(場)テンソルσijと歪み(場)テンソルem1との関係式(数式18)を使用し、また上記4階テンソルは共変微分に対して定数として扱った。「:」の記号は共変微分を示すことは前述した。

【0067】

【数16】

【0068】

【数17】

【0069】

【数18】

【0070】一方、連続体での平衡条件により、体積力Xi と応力(場)テンソルeijとは数式19で与えられる。

【0071】

【数19】

【0072】従って、数式17は体積力の変化分ΔXi を示すので、数式16、同17から数式20が得られる。

【0073】

【数20】

【0074】数式20は、空間の曲がりを示すリーマン曲率テンソルの勾配によって空間歪み力を発生することを示す。ここで発生する空間歪み力は、空間とこの空間を充填する物体に浸透する体積力である。

【0075】

V.空間の曲率(Space Curvature)の構造

空間の曲率は、リーマン曲率テンソルによって決定される。リーマン曲率テンソルは数式21、同22で与えられる。

【0076】

【数21】

【0077】

【数22】

【0078】リーマン曲率テンソルは、計量テンソルである

【0079】

【外5】

【0080】で構成されるので、空間の構造はこの計量テンソルによって決定される。そして、この計量テンソルの解は重力場方程式によって決定される。

【0081】更にスカラー曲率Rと、リッチテンソルである

【0082】

【外6】

【0083】とリーマン曲率テンソルとは、以下の関係を有する(数式23)。

【0084】

【数23】

【0085】物質エネルギーテンソルを表す

【0086】

【外7】

【0087】を重力場方程式に適用すると数式24となり、これを展開すると、最終的に数式25が得られる。

【0088】

【数24】

【0089】

【数25】

【0090】一方、物質エネルギーテンソルは数式26で与えられる。

【0091】

【数26】

【0092】なお、数式26において、ρは静止質量密度、

【0093】

【外8】

【0094】と共に、

【0095】

【外9】

【0096】は4元速度を示す。

【0097】今、物質の速度が光速度cに比べて充分に小さいと仮定すると、4元速度は数式27で与えられる。それ故、物質エネルギーテンソルの最大成分はμ=ν=0の場合であるので、Y00は数式28となる。

【0098】

【数27】

【0099】

【数28】

【0100】従って、数式28を数式25に代入すれば、物質エネルギーテンソル、即ち、静止質量密度による曲率の最大成分R00が得られる(数式29)。

【0101】

【数29】

【0102】この数式29は静止質量密度ρが空間の曲率を制御することを示す。磁場Bも後述するように同様に空間の曲率を制御する。つまり、質量密度や磁場は空間の曲率(Space Curvature)を生成するのである。

【0103】さて、静的で球対称なシュヴァルツシルト時空で近似できる空間を考えると、スカラー曲率Rは数式30で与えられる。

【0104】

【数30】

【0105】リーマン空間上のリーマン曲率テンソルとリーマン空間に埋め込まれた2次元サブ空間上のガウス曲率Kとは数式31の関係を有し、更に、スカラー曲率Rとガウス曲率Kとは数式32の関係がある。従って、数式31から、2次元リーマン空間に対して数式33が得られる。

【0106】

【数31】

【0107】

【数32】

【0108】

【数33】

【0109】VI.磁場による空間の曲率制御

電磁エネルギーテンソルMijを重力場方程式に適用する。この場合、計量テンソルgijは数式34で与えられる。

【0110】

【数34】

【0111】数式34は電磁エネルギーによる空間の構造を決定する式であるが、この数式34にgijを掛けて変形することにより、数式35が得られ、両式から次式(数式36)が得られる。

【0112】

【数35】

【0113】

【数36】

【0114】電磁場の大きさを示す反対称テンソルfijを使用することにより、電磁エネルギーテンソルMijは、数式37、同38で与えられるので、Mの値は次のように求められる(数式39)。

【0115】

【数37】

【0116】

【数38】

【0117】

【数39】

【0118】M=0を数式36に代入することにより、数式40が得られる。

【0119】

【数40】

【0120】リッチテンソルRijは、10個の独立の成分を持つが、主要な成分はi=j=0、つまり、R00である。従って、数式40から数式41が得られる。

【0121】

【数41】

【0122】一方、反対称テンソルfij=−fjiは、マクスウエルの電磁方程式との関連から電場Eと磁場Bとによって与えられる(数式42)。

【0123】

【数42】

【0124】数式42を数式37、同38に代入して数式43が得られ、最終的に数式44が得られる。なお、両式において、μ0 は4π×10-7(H/m)、ε0 は1/36π×10-9(F/m)、cは3×108(m/s)、Bは磁場(Tesla)、Gは6.672×10-11(N・m2 kg2)、R00は空間の曲率成分(1/m2)である。

【0125】

【数43】

【0126】

【数44】

【0127】数式44は、空間の主要な曲率成分が磁場Bによって制御されることを示す。電場Eによっても制御は可能だが、同程度の大きさのE、Bであれば、1/2・ε0 2 の値が1/2μ0 ・B2 の値に比べて約17桁程小さいので、電場Eの曲率への寄与は磁場Bに比べて充分に無視できる。

【0128】一方、物質エネルギーテンソルYijによる主要曲率成分は数式45で与えられる。

【0129】

【数45】

【0130】空間の曲率成分R00はその発生源として物質エネルギー又は電磁エネルギーテンソルの要因とは無関係であるので、数式46となり、数式47が導かれる。

【0131】

【数46】

【0132】

【数47】

【0133】B2 /2μ0 =Wは、磁場のエネルギー密度(J/m3)を示すので、静止質量密度ρ(kg/m3)とは次の関係がある(数式48)。数式48は、質量とエネルギーとの関係式、E=mc2 を保証するものである。

【0134】

【数48】

【0135】VII.空間の曲率による場の圧力(表面力)発生3次元空間の基本的な構造は2次曲面構造により決定されるので、2次元リーマン空間でのガウス曲率Kが実用的な概念を与える(数式49)。

【0136】

【数49】

【0137】この2次曲面に対し膜理論を適用することにより次の平衡条件式が得られる(数式50)。

【0138】

【数50】

【0139】なお、数式50において、

【0140】

【外10】

【0141】は膜力(線応力)、

【0142】

【外11】

【0143】は曲面の第2基本計量、P3 は曲面上の垂直応力(表面力)である。

【0144】曲面の第2基本計量は、曲面の主曲率と計量テンソル間で以下の関係を有する(数式51、同52)。

【0145】

【数51】

【0146】

【数52】

【0147】従って、数式50から数式53となる。

【0148】

【数53】

【0149】2次曲面に対してα,iは2値をとるので、数式54となる。なお、数式54において、K(1) 、K(2) は曲面の主曲率であり、主曲率半径R1 、同R2 の逆数である。

【0150】

【数54】

【0151】また、ガウス曲率Kは数式55で与えられるので、膜力N11=N22=Nを仮定して数式56となる。

【0152】

【数55】

【0153】

【数56】

【0154】即ち、曲面上の膜力と主曲率は、曲面上に表面力としての垂直応力P3 (N/m3 )を発生させ、その方向は曲面の内方に向かう。

【0155】さて、主曲率半径R1 、同R2 が共に半径Rに等しい球状型空間内の薄層の曲面を考える。ガウス曲率Kは、数式49、同55から数式57となるので、1/R=(R00/2)1/2 を数式56に代入すると、数式58となり、数式59が得られる。

【0156】

【数57】

【0157】

【数58】

【0158】

【数59】

【0159】線応力としての空間の膜力Nは、一定の条件のもとでは固有の定数値と考えられるので、数式59からR00の曲率は曲面の内方に向かう空間の表面力としての垂直応力P3 を発生する。この曲面の内側方向の垂直応力P3 は即ち場の圧力であり、空間の領域内での多数の曲面の集積により、1方向性の圧力場を形成する。ここで、空間の薄層の曲面の表面力=曲面の内側方向の垂直圧力=場の圧力=−P3(N/m2)と全て同義であり、見方の差だけである。表面力の場は一種の力の場であり、空間の領域内の物質に対し加速度を与えるので、加速度の場を生成することになる。上記から空間の曲率(Curvature)は空間それ自体に表面力(Surface Force)を発生し、空間領域に1方向性の加速度場を形成する。

【0160】VIII.空間の曲率と加速度の場

空間の曲率により空間の曲がった薄膜層それ自体に内側に向かう表面力を発生し、これらの薄膜層の集積によりある空間領域に加速度の場が形成される。この空間の幾何学的な構造によりもたらされる加速度の場の強さαと空間の主要曲率成分R00とは、空間の曲率が比較的小さくて歪みの場が弱く、かつ、この場が時間的に静的な場合、ニュートン力学との比較からそれぞれ数式60、同61で与えられる。

【0161】

【数60】

【0162】

【数61】

【0163】ここで、h00は曲がった空間の計量テンソルg00と平坦な空間のミンコフスキー計量η00=−1との偏差を示し、数式62、同63の関係がある。

【0164】

【数62】

【0165】

【数63】

【0166】数式62と同63から空間の曲率と加速度場との関係は、数式64、同65となる。

【0167】

【数64】

【0168】

【数65】

【0169】また、数式60と同61から数式66が得られる。

【0170】

【数66】

【0171】数式66は、空間の歪みe00(=1/2・h00)の距離的勾配が加速度の場αを生成することを示す。また、リーマン接続係数Γi00 という幾何学的な量は、e00i という歪みの勾配を示す物理量に対応していることが解る。

【0172】空間が静的な球対称なシュヴァルツシルト時空において、リーマン接続係数であるΓi00 が0でない成分は、球体の半径方向に向かうi=3の成分、すなわち、Γ300 のみである。従って、R00は数式67となり、加速度α3 =αは数式68で与えられる。

【0173】

【数67】

【0174】

【数68】

【0175】数式68は、加速度の場にある物体が受ける加速度αは空間の曲率R00の距離的積分に比例することを示す。

【0176】ニュートン力学上で加速度αはポテンシャルΦ:i で与えられる。ここで、Φは数式69で与えられるが、α=Φ:i と数式60とから数式70となるので、h00は数式71となる。従って、R00は数式72となる。

【0177】

【数69】

【0178】

【数70】

【0179】

【数71】

【0180】

【数72】

【0181】一方、加速度は次式(数式73)で求められ、地球表面での値は地球の半径と質量を代入することにより、それぞれの値が求められる(数式74)。

【0182】

【数73】

【0183】

【数74】

【0184】また、磁場と曲率との関係式(数式75) から、空間の曲率3.42×10-23 を生成する磁場の強さは20million Tesla となる。

【0185】

【数75】

【0186】次に、空間の曲率と加速度場との関係について検討する。空間の曲率R00によって生成される空間の場の表面力は、P3 =N・(2R001/2 で与えられることは既に述べた。地球表面上の空間の曲率R00は、3.42×10-23 で与えられ、その点の空間の場にある物体は1Gの重力加速度を場から受ける。曲率の値は極めて小さいが地表で1Gの加速度を引き起こすのに充分な大きさなのである。厳密には、表面力の勾配によって物体への加速度は与えられるが、いま空間の充分に小さな局所領域を考えることにより加速度の場を生成する真の要因である表面力P3 によって加速度との対応が近似的に得られる。

【0187】1Gの加速度の場を与える表面力P3 を生成する空間の曲率R00は地球の質量密度によってもたらされたものだが、空間の曲率は前述のように磁場によってももたらされる。空間の性質としての曲率はその発生要因とは独立に同一の結果でなければならない。従って、1G=P3 =N・(2*3.4210-23)1/2 =N・(2*8.2 10-38 ・B2)1/2 から、B=20M Tesla となる。

【0188】さて、仮に、地球の大きさは元のままで質量が100 倍つまり密度が100 倍になると、表面上の空間の曲率はR003.4210-21 で、対応する加速度の場の強さは100 Gとなり、上記と同じ手法で対応する磁場の強さは200 M Tesla となる。同じ考えで次表が得られる。

【0189】

【表1】

【0190】ここで、注意しなければならないことは、曲率R00の値と加速度αの値とは1対1には対応しないということである。数式65からも解るように、曲率つまり空間がどれ程曲がっているかの程度は加速度の値そのものではなく、加速度が変化する度合い、つまり加速度の場の勾配に対応するのである。

【0191】或は、数式73から加速度は曲率の距離に関する積分つまり曲がった空間の領域範囲(Volume)に対応しているということである。

【0192】また、ここでの比較は、地球という物質の球体表面と磁場を球状の殻に閉じ込めた場合の球体表面上での比較である。球体表面の外点つまり自由空間では体分布密度関数としての歪みポテンシャルはラプラス方程式を満たすため、距離rの関数として減衰していくことに留意しておきたい。表の値は一応の目安を与えるものである。

【0193】IX.重力と慣性力

重力と慣性力は共にその大きさが体積要素の質量に比例し、外部から物体の各部分に浸透し、その内部で一様に分布し、内部の全物質点に均等に作用する力であり、共に体積力としての性質を呈する。疑似重力としての慣性力は重力と等価であり、重力を局所的に打ち消すことは等価原理として周知の事実である。航空機の旋回飛行によって一時的に無重力状態を達成できることなどから既に経験済みである。

【0194】この体積要素内の全物質点が等しく作用を受け移動するためには、この領域内で表面力(面積力とも言う)の勾配つまり一種の圧力差勾配の存在が必要不可欠である。つまり、体積要素自身の外殻の移動のみならず体積要素の蔵物まで含めて均等に移動するためには、体積要素内にΔPの表面力差が駆動力として必要である(図2参照)。このメカニズムが加速度の場を生成させるのである。

【0195】重力と慣性力は空間を連続体と仮定すると、共に歪みの勾配が生成され、詳しい数式は省略するが、この歪みの勾配により前述の表面力の距離的勾配が生成される。従って、全物質点に均等に作用する体積力が生じ、そのメカニズムは全く同等である。

【0196】重力と慣性力の本質的な差異は、重力が空間の曲率R00を伴うのに対し、慣性力は空間の曲率を伴わない、つまり曲率R00=0であるという点である。慣性力の場合、曲率R00=0より、加速度αは場所によらず一定となる(数式76)。

【0197】

【数76】

【0198】しかし、重力の場合は、空間の曲率は場所の関数となり、数式77で与えられるので、加速度αは場所の関数となり、一定ではない。逆の言い方をすると、重力では、加速度の値は場所によって変化する。正確には距離的な勾配を持っており、この加速度の変化の度合いが曲率つまり空間がどれくらい曲がっているかに対応するのである。

【0199】

【数77】

【0200】重力と慣性力は曲率の有無により識別されるが、共に空間の曲がりによる歪み勾配と物体の加速度運動に伴う空間の線歪み勾配とが発生し、表面力勾配が生成されるため、体積力の性質を呈することになる。

【0201】推進作動原理

以上の説明を要約すると、■空間の曲がりによって空間の歪みが発生する。空間の歪み力は、場として空間とこの空間を充填する物体に浸透し作用する。このような空間の曲がりは、物体質量のみならず磁場によっても生成される。つまり磁場により空間の主要な曲率成分R00を制御できる(数式78)。■空間の曲率R00は空間の場の圧力として物体を含む空間領域に一方向性の圧力場−P3 を生成する(数式79)、または空間の曲率は曲がった空間領域に加速度の場を形成する(数式68)。■一方向性の圧力場の中にある物体はこの圧力を場から受けて移動する、または加速度αの場にある質量mの物体はこの場からf=mαの推力を受けて移動する。この圧力は圧力勾配の場にある物体が受ける正味の圧力差と等価である。これが、本発明の推進原理を与える。

【0202】

【数78】

【0203】

【数79】

【0204】即ち、物体(飛翔体)に搭載した磁気エネルギー発生手段の配置領域(推進部)近傍の空間領域に強力な磁場によって曲がりを発生させる。しかし、静的な磁場では空間の曲率を変える作用と空間の歪みの作用とが平衡するので、推力が発生しても飛翔体の推進(移動)はない。従って、飛翔体を推進させるためには、磁場の空間への作用と空間からの逆作用との平衡状態を一方的に破る必要があり、そのために磁気制御手段を搭載してある。このとき、空間への作用はゆっくりと平衡状態を保ちながら準静的過程で行い、空間からの逆作用は瞬時に行う。エネルギー解放速度を制御することが重要である。弓矢のようなもので、弾性体の歪みエネルギーとして徐々に蓄え、矢に瞬間的なエネルギーを与えることに近い。従って、磁場発生時には逆推力とはなりえない。

【0205】磁気制御手段は、磁気エネルギー発生手段の発生する強磁場がパルス状に変化するように、あるいは、磁場を回転(30GHz)させるようにその発生態様を制御し、空間の曲率成分の動的な変化を生成し、空間の場から連続的な推力を得て推進するのである。

【0206】空間は連続体として有限の歪み速度(光速度)を有しており、磁場が瞬断されても、歪んだ(曲がった)空間が平坦な空間に戻るには有限の時間を要する。平坦な空間に戻る遷移過程の間、飛翔体は曲がった空間の場に独立に存在し、この空間の場からの作用を受けて推進できる。

【0207】即ち、空間を曲げている作用を瞬断させることにより平衡状態が破られるので、曲がった空間が曲がりのない平坦な空間に戻る遷移過程の微小時間の間、飛翔体は曲がった空間の場から独立であり、飛翔体は空間からの場の逆作用を受けて推進できることになる。

【0208】一般的に、自ら生成させた場により、その場を引きずりながらの推進はできない。つまり推進するものと場は独立していないと、場による推進はできない。場への作用と場からの反作用が平衡しているためである。このとき、反作用を作用から時間的にdelay(遅延) させることが原理上重要である。

【0209】本飛翔体の特徴

(1)推力が体積力であるため飛翔体(宇宙船)及び飛翔体(宇宙船)内部の乗員を含む全物質点が同じ力を受け加速されるので、慣性力の作用はない。

【0210】(2)空中での静止状態から全方向への急発進、急停止、直角旋回及びジグザグ旋回等の航法が可能である。

【0211】(3)空間に作用する磁場エネルギー及び動力源は飛翔体(宇宙船)に内蔵されるので、惑星大気圏及び宇宙空間航行の両用ができる。

【0212】(4)推進加速度はパルス磁場制御により数μG〜100Gと自由に可変できる。つまり、航法が安定している(空中停止〜低速度〜高速度が任意である)。

【0213】(5)高速化に伴う質量増加に対し推力は比例するので、推進加速度は常に一定となる。また、推進作動時間に制限がないので、飛翔体(宇宙船)の最終到達速度は準光速度となる。

【0214】(6)内燃機関ではないので、騒音(プロペラ音、ガス噴射音)や噴射ガスを発生しない。また、爆発物である燃料を搭載しないので、安全性が高い。

【0215】(7)飛翔体(宇宙船)を含む空間領域全体に推力が作用するので、大気中では飛翔体(宇宙船)外表面の空気も同様に加速され移動することになり、空力加熱の発生を軽減できる。つまり、空気分子間の摩擦になるだけであり、飛翔体(宇宙船)は大気中を高速度(秒速数km/s〜数10km/s) で移動できる。但し、高熱でイオン化した空気(プラズマ)が飛翔体(宇宙船)全体を包むことが予想される。

【0216】(8)飛翔体(宇宙船)の形状は動作原理及び全方向性から、球体または楕円体が最も機能効率に優れた形状と言える。

【0217】(9)飛翔体(宇宙船)周辺の空間領域は局所的に曲がっているので、重力レンズ効果により、飛翔体(宇宙船)の形状が変化し、あるいは、地上の観測者との位置即ち距離と方位角度により全く見えない死角ができる可能性がある。

(10)宇宙船の推進加速度100Gで、火星までの所要時間は11時間程度であり、有人惑星探査に必要な期間は激減する。

(11)磁場をOFFするタイミング制御により、宇宙船下部の物体の吸い上げ放遂が行える。

【0218】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図3は、本発明の一実施例に係る飛翔体の外観を示し、図3(A)は上面断面概略図、図3(B)は側面断面概略図である。

【0219】本実施例に係る飛翔体1は楕円体状のものからなり、円盤外周を4等分した4つの外周位置と円盤の上下面の中央位置とに推進エンジン(21〜26)を設けてある。

【0220】この推進エンジン(21〜26)は、それぞれ、磁気エネルギー発生手段とこれを制御する磁気制御手段とを1対1に対応付けて構成してある。なお、磁気制御手段は、全体として1つ設け、全ての磁気エネルギー発生手段を総括制御するようにしても良い。

【0221】磁気エネルギー発生手段は、強力な磁場を発生して飛翔体1周辺の空間の曲率成分の値を0又はある値からある値に増加させ、後述するように空間の歪み力としての加速度の場を生成させる。磁気制御手段は、強力な磁気エネルギーによって生ずる空間の曲率成分の変化を準反対称に局所的なものとすると同時に、推進力を得るために、磁場がパルス状に変化するように、あるいは、磁場の回転により空間の曲率成分が動的に変化するように磁気エネルギー発生手段を制御する。

【0222】図4は、図3(B)の推進エンジン24を作動させた状態を示す。飛翔体1は、空間の非対称な歪み場から外力(圧力差)P−P′を受けて、図中右方向(P′の方向)へ推進する。他の推進エンジンにおいても同様であり、垂直方向及び水平面内の互いに直交する方向への推進力がそれぞれ得られ、これらの組み合わせにより任意の方向への移動制御ができる。

【0223】例えば、図3に示す飛翔体において推進エンジンを図5に示すような形のものにすれば、推進エンジン4基により、図6に示すように、空中の静止状態からの任意方向への急発進、急停止(図6(A))、水平移動と垂直上昇(下降)の組み合わせ航法(図6(B))、ジクザグ的な航法(図6(C))、等従来の推進方式では得られない任意の航法が可能となる。

【0224】次に、推進作動原理は前述したが、より理解を容易にするために、先ず実用的な推進概念を説明し、その後順に、推進エンジンの配置構成、飛翔体(宇宙船)の運動性、推進効率、準反対称な空間を生成する推進エンジンの構造モデルについて説明する。

【0225】推進原理の概念的説明

例えば、地球周辺の空間の場にある物体は地球中心方向に向かって移動(落下)する。物体の移動の直接的な原因は、地球周辺の空間の曲がりによる歪み場に起因する作用であり、決して地球それ自体による作用ではない。唯、地球の質量(密度)の存在が空間を曲げることになるので、物体の移動に対しては間接的な原因ではある。

【0226】物体が地球中心方向に向かうのは、地球の質量(密度)により生成される空間の曲率の方向(曲面の垂直方向)に歪みの場の勾配が生成され、地球中心方向と一致するからである(図7)。曲がった空間と物体とは独立しており、相互作用はない点留意すべきである。

【0227】今、仮想実験として、地球という存在がなく、宇宙空間に上記と同じ領域に空間の曲がりだけが存在していると想定する。空間の曲がりの場にある物体は、全く同じように移動することになる(図8)。曲がった空間と物体とは相互作用なく独立である。

【0228】このことは、太陽の回りを公転している地球において、太陽が瞬時に消滅しても、その影響が地球に到達するのは8分32秒後であり、それまでの間、地球は既になくなった太陽の回りを依然として公転し続ける事実と同様の解釈である。

【0229】本推進原理は、宇宙空間に在る物体(宇宙船)が、物体周辺に上記のような一方向性の空間の曲がりを人工的に生成し、その生成作用を瞬時に断つことにより、上記と等価な空間の曲がりの状態を作り出すことにある。但し、生成作用を断った直後の状態は、曲がった空間が平坦な空間に戻る遷移状態にあり、この過程で曲がった空間と物体(宇宙船)とは独立しており、相互作用はない(図9)。

【0230】この曲がった空間の領域で発生する加速度αは、曲率をR00、光速度をc、曲がった領域を示す積分定数をrとして数式80で与えられる。

【0231】

【数80】

【0232】もし、空間の曲率が領域内で一様(定数値)ならば(図9)、領域長をsとして加速度αは数式81となる。そして、空間の曲率は質量密度ρ、または、磁場Bにより生成される(数式82)。つまり、質量体または磁場により、空間の領域に加速度の場ができることになる。

【0233】

【数81】

【0234】

【数82】

【0235】物体の消滅は仮想実験として成立しても現実には爆発でもしない限り不可能である。しかし、物体の消滅と等価なことが、磁場ではOFF 制御により容易に可能となるのである。

【0236】宇宙船を推進させるためには、図10のような空間の歪み面が理想的である。即ち、領域A′では曲率R00=0の平坦な空間、領域Aでは曲率R00≠0のある曲率を有する曲がった空間(歪んだ空間)のような、反対称な曲率を有する空間である。曲がった空間領域Aで生成される加速度場の大きさ、つまり加速度αは、R00を一様と仮定した場合、Gを万有引力定数、μ0 を真空の透磁率として数式83で与えられ、磁場Bにより空間領域に加速度の場が生成されることは既述の通りである。

【0237】

【数83】

【0238】しかし、実用的には図11に示すように、空間の歪み面が宇宙船のエンジンを中心に球対称であっても推進には影響ない。宇宙船が領域Aの加速度場の推力を受けて移動する有限時間の内に、領域A′の曲がった空間の歪み面は平坦な空間(R00=0)に既に戻ってしまうので、領域A′の加速度場による逆推力はない。

【0239】曲がった空間が平坦な空間に戻る時間τは、空間の歪み速度が光速度cであることから、τ=1/cで一定である。また、加速度場から受けるこの推力は重力と等価な体積力であり、体積要素の質量に比例するため、図11の状態では領域A′に宇宙船の質量体がないということからも、領域A′からの逆推力はないことが解る。

【0240】また、実用的には更に、図12に示すように、領域A′の歪み面が領域Aの歪み面よりも弱くなるような空間、つまり(領域A′の空間の曲率R00′)<(領域Aの空間の曲率R00)となるような準反対称の曲率を有する空間でもよい。この準反対称の曲率を有する空間は、宇宙船のエンジン内の磁場分布の制御によって生成する。

【0241】エンジン内の反対称に分布制御された磁場をそれぞれB、B′とすると、領域Aの空間の曲率は数式84、領域A′の空間の曲率は数式85となる。従って、B′=(1/10〜1/40)×Bに制御すると、領域A′の空間の曲率R00′は、R00′=(1/100〜1/1600)×R00となり、数値的なオーダーとして 、R00′《R00と準反対称な空間にできる。

【0242】

【数84】

【0243】

【数85】

【0244】領域A′には宇宙船の質量体はないが、領域A′での加速度α′は数式86、また領域Aでの加速度αは数式87であるが、R00′《R00より、α′《αとなり、宇宙船は図12の準反対称な空間を推進できる。

【0245】

【数86】

【0246】

【数87】

【0247】更に、領域Aと領域A′双方の曲がった空間が平坦な空間に戻る時間τは同一であり、領域Aで加速された宇宙船が領域A′に移動する間に空間の曲がりは既になくなっており、α′=0となる。また宇宙船の質量体(質量m)は領域A′になく、大半が領域Aにあるため、加速度による推力fA =mαに対し、fA ′≒0×α′=0であり、領域A′による逆推力は最初から微小量として扱える。

【0248】

エンジン配置構成と飛翔体(宇宙船)の運動性

図13(A)は、6基のエンジンを図3に示したように配置したもので、この配置構成では全方向への移動が可能である。前進のために前部エンジンを作動し、後進のために後部エンジンを作動し、右進のために右部エンジンを作動し、左進のために左部エンジンを作動し、上昇のために上部エンジンを作動し、降下のために下部エンジンを作動するが、推進方向は各エンジン部の推進方向のベクトル合成であるので、飛翔体は全方向に移動できる。

【0249】例えば、左直角旋回は次のようにして行う。100G1km/s2の加速度で、前部エンジンの1秒間作動により、1秒後に0→1km/sの等速直線運動。その後、後部エンジンの1秒間作動により、1秒後に1km/s→0で停止する。そして、左部エンジンの1秒間作動により、1秒後に0→1km/sで、直角に左進(等速直線運動)する。

【0250】そして、エンジンは球体内に形成するが、エンジンの種類を、図13(B)に示すように、1個の球体から2個の球体(小球と大球)を連結してボーリングのピン状にしたものとすれば、エンジンの個数を減らせる。図中、上部の小球は上部エンジンに対応し、下部の大球は下部エンジンに対応する。

【0251】このようなピン状体のエンジンの4基を図13(C)のように配置しても全方向への移動が可能である。また、このピン状体のエンジンの3基を正3角形状に配置してもエンジン制御性能の変更により全方向移動可能にできる。

【0252】推進エンジンの構造モデル

エンジンの機能として、空間に曲率を与えることにより空間の場の圧力として一方向性の表面力の場を形成することが要求される。表面力を発生している空間の薄層の2次曲面を空間の歪み面という。表面力はこの歪み面の内側に向かう。

【0253】さて、磁場Bにより制御される空間の曲率成分は数式88で与えられるが、この強力な磁場は、球状の強度を有する完全反磁性体(超電導材料)の殻内に閉じ込めた超電導マグネットによって発生する。完全反磁性体を用いるのはエンジン内の磁場を内部に閉じ込め外部空間に出さないで、純粋に空間の曲率のみを得るためである。エンジン周辺の空間には球対称な場として球面状の歪み面が生成される(図14)。

【0254】

【数88】

【0255】エンジンは、その中心に向かう表面力を空間の歪み面から球対称に受けるので、表面力が平衡し移動はできない。但し、エンジン周辺の歪みの場に在る他の物質は球心方向の表面力を受けてエンジンの中心に向かって移動する。

【0256】推進するためには、エンジンにより空間の領域に反対称な一方向性の歪みの場の生成が要求される。即ちエンジン周辺の空間の片側半分の領域で曲率R00≠0(曲がった空間)、他の片側半分の領域でR00=0(平坦な空間)の反対称な場を磁場の方向制御によって生成することが必要である。

【0257】そこで、推進エンジンにおける磁気エネルギー発生手段の原理的な構造は、図15に示すように、球対称な磁場を発生する主超電導マグネット31と、この主超電導マグネット31の片側の半球磁場内に磁場の極性が逆になるように配置した補助超電導マグネット32とで構成する。推進力として必要とされる磁場は数百億テスラの値であるので、通常の磁場発生手段では実現できないので、超電導マグネットを使用するのである。

【0258】これにより、図16に示す反対称な一方向性の歪みの場が生成される。エンジンは反対称な表面力を受けるため曲率0の平坦な空間領域に向かって一方向に移動する。エンジンの片側の空間領域(曲率≠0)に在る他の物質も同様に曲率0の平坦な空間領域に向かって移動する。従って、磁場の発生をON/OFF制御すれば飛翔体(宇宙船)を推進できることになる。

【0259】なお、磁場の大きさは、B2 =B・B=│B│2 で与えられるので、異なる2つの磁場をB1 、B2 、合成磁場をBT とすると、数式89が得られる。そして、2つの磁場が同じ大きさの場合、磁場の方向が順方向だと数式90、逆方向だと数式91となる。

【0260】

【数89】

【0261】

【数90】

【0262】

【数91】

【0263】推進効率とエネルギー式

次に、磁気制御手段の説明のために本推進エンジンの推進効率をエネルギー変換の観点から検討する。変換フローは、供給電力エネルギー(PWE)→超電導磁場エネルギー(EMAG)→空間の曲率(R00)→空間に貯えた歪みエネルギー(USTRAIN):=エンジン出力エネルギー(ENGPWR)→空間歪みエネルギーの放出→有効推進エネルギー(EEFP)+無効推進エネルギー(ELOS)+放射エネルギー(ERAD)となる。各フェイズでの効率は数式92〜同95となり、エンジン全体の効率ηは数式96となる。

【0264】

【数92】

【0265】

【数93】

【0266】

【数94】

【0267】

【数95】

【0268】

【数96】

【0269】そして、空間に貯えた歪みエネルギーUSTRAIN(エンジン出力エネルギー)は数式97、(有効推進エネルギー+無効推進エネルギー+放射エネルギー)は数式98となる。

【0270】

【数97】

【0271】

【数98】

【0272】数式98において、V1 とρ1 は飛翔体の体積と平均密度、V2 とρ2 は飛翔体周辺の有限領域の体積とその平均密度(大気中であれば大気密度)、hとνはプランク定数と放射エネルギー振動数である。つまり、無効推進エネルギーとは、本推力が体積力であるために周辺の大気をも同じように加速するためのエネルギーロスを意味する。また、空間歪みエネルギーが全て推進エネルギーとして変換されるとは限らず、一部は放射エネルギーとして放出されると考えられる。

【0273】なお、エンジンの全体効率は仕事率の観点から数式99で与えられる。

【0274】

【数99】

【0275】数式99において、fは場の体積力(N/m3)、Vは作用領域(m3)、fV=Fは推力(N)、vは推進速度(m/s)、νは超電導エンジン励磁サイクル数、Eは超電導コイル励磁電圧(V)、Iは超電導コイル励磁電流(A)、τは電流パルス幅(s)である。

【0276】要するに、数式99から、エンジン励磁サイクル数νの可変により推進速度を制御でき、また推力は基本的に動力源のパワーEIに依存し、励磁電流Iを可変することで制御される。

【0277】結局、磁気制御手段は、励磁電流パルスの繰り返し周波数を制御するよう構成される。これにより、磁場がパルス状に変化し、磁場のON/OFFに伴い空間の曲率の動的な変化が得られ、飛翔体(宇宙船)は、磁場のCut-Off 時の曲がった空間が平坦な空間に戻る遷移過程の瞬時に空間の場からの作用としての推力をパルス的に受けて推進できることになる。

【0278】さて、磁場発生手段の具体例を説明する。これは、磁束凍結及びレーザ光爆縮によって強磁場を得るものである(図17、図18、図19)。

【0279】まず磁束凍結について若干説明をする。磁束凍結は磁場凍結とも呼ばれるが、これは良電導性流体が磁場内で動くとき、磁束(磁力線)が流体に付着して一緒に動こうとする現象である。原理的には、良電導性流体と磁場の間に相対運動があると、電磁誘導により電流が誘導され、この電流と磁場が相互作用して流体と磁場の相対運動を打ち消そうとする。その結果、流体と磁場は一体となって恰も磁力線が流体に付着しているかのように運動する。磁場が流体に付着(凍結)しているため、流体の運動により、磁力線が引きずられて変形したり、強められたりする。

【0280】この現象は化石機構として天体が持つ磁場を説明する仮説として提案されている。つまり、星間ガスの収縮によって星が誕生するとき、磁力線がガスに凍結していると、ガスの収縮に伴い磁力線が濃縮され、星はポロイダル型の磁場を持つことになる。中性子星で約5億テスラ程度と試算されており、観測結果と符号している。

【0281】さて、図17において、(a)は磁束(磁力線)が良電導性流体粒子に凍結した状態を示し、(b)は外力等の作用により流体粒子が収縮し、磁力線もそれに応じて収縮した状態を示し、(c)は流体粒子が更に収縮しポロイダル型となった状態を示す。流体粒子の収縮に伴い流体粒子に凍結した磁束も同じ収縮運動を行うため、磁束φ(Wb)は保存されながら磁束通過面積S(m2)だけが収縮し小さくなる。従って、磁束密度つまり磁束の強さB(Tesla) は、B=φ/Sで、その値は増加し磁場が濃縮されるのである。

【0282】図18は、強力な磁場濃縮の原理を示す。予め注入しておいた噴霧状の良電導性液体金属の流体粒子またはそのまま流し込んだ液体金属に初期磁場を加え、磁束凍結状態にさせる。その後、磁束凍結した流体粒子または液体金属の領域に四方周辺からレーザ光を照射する。照射された流体粒子または液体金属の表面は加熱されプラズマの噴出が始まり、流体粒子または液体金属はプラズマ噴出の反動を受け中心方向へ圧縮される。所謂爆縮効果が達成され、レーザ光による光圧力の収縮効果を更に高める役割を果たす。なお、左右のレーザ光強度の制御(例えば右側強度>左側強度)により、磁場の非対称な分布が得られるので、この方式によれば図15に示した補助超電導マグネット32を不要にできる。

【0283】このように流体粒子または液体金属は、レーザ光の光圧力と高温プラズマガス反動により発生するアブレーション(噴出)圧力により急速に収縮するので、流体粒子に凍結された磁束も同様に収縮し、磁場濃縮が達成される。

【0284】レーザ光パワー密度S(W/m2)は、光圧力をu(Pa:=N/m2)、光速値をCとして、S=u・Cで与えられる。また、濃縮による面積比率(1/r)を考慮すると、レーザ光パワー密度は、S=u・C・(1/r)に軽減される。

【0285】現在実用化されているレーザ光パワー密度は、10171018(W/cm2) 程度であるので、仮に濃縮による半径比1/1000を仮定すると、面積比率は、1/r 1/106 となり、S=1017(W/cm2) 1021(W/m2)より、レーザ光圧uは10兆気圧となる。レーザ光の爆縮効果を含めた光圧により、磁束凍結した良電導性流体粒子は急速に収縮し強力な磁場濃縮が行われることになる。

【0286】次に、図19は、強磁場発生装置を示す。この強磁場発生装置は、良電導性流体としての液体金属をそのまま流体として、または噴霧状の流体粒子としてブランケット41内に噴射注入するノズル42と、ブランケット41内に初期磁場(種磁場)を生成させる超電導マグネット43と、同44と、ブランケット41内で磁束凍結した流体粒子または液体金属に光圧と爆縮効果を与えるレーザ光源45と、同46と、磁束凍結が解除された流体粒子または液体金属を排気する排気ポンプ47と、液体金属貯蔵容器48とで基本的に構成され、数10万テスラから数百億テスラのパルス磁場を連続的に発生できる装置である。

【0287】図19において、初期磁場(種磁場)を50テスラとして、50万テスラのパルス磁場を連続発生する動作を説明する。まず、液体金属貯蔵容器48から良電導性液体金属がノズル42により噴霧状粒子としてまたは液体金属のままブランケット41内に噴射注入される。その後、上下にある超電導マグネット(43、44)によりブランケット41内部の空間に初期磁場(50テスラ)を生成させる。磁場は噴射注入された流体粒子または液体金属に凍結される。

【0288】次に、レーザ光源(45、46)からパルスレーザ光を流体粒子または液体金属に照射する。このパルスレーザ光のパワー密度は1018W/cm2 1022(W/m2)である。このとき、光圧は1022/3*108 =3*1013Paで、3億気圧に相当する。そして、レーザ光爆縮効果により、半径比1/100 を仮定すると、面積比で1/104 となるので、本効果を考慮して3兆気圧の圧力で流体粒子または液体金属を収縮させることになる。この場合、面積比は1/104 なので、50テスラの初期磁場は50104 50万テスラの磁場に濃縮される。なお、50万テスラの磁気圧力は1兆気圧である。

【0289】この磁場濃縮過程は、磁気圧力とレーザ光圧力とが平衡する状態まで進行する。レーザ光のパルス照射を終了すると、光圧が減少するので、収縮した流体粒子または液体金属は、磁気圧により膨張爆発過程に進もうとするが、この時点で超電導マグネット(43、44)の磁場生成作用を停止させる。磁場停止により磁束凍結解除されてブランケット41内に残留する流体粒子または液体金属は、排気ポンプ47により排気され、再度液体金属貯蔵容器48に戻される。この過程で必要により消磁作用が行われる。

【0290】以上の過程を1サイクルとして1秒間に数千サイクル繰り返す。つまり、数KHzの連続パルスによる50万テスラの強磁場が発生する。そして、前述したように、左右のレーザ光源(45、46)の強度を制御する。つまり、本装置は、磁気エネルギー発生手段と磁気制御手段とを備えているのである。

【0291】以上、現有技術で最も実現性のある50万テスラ程度の強磁場の発生を説明したが、発生する磁場の強度は、レーザ光パワー密度及びそれに伴う爆縮効果により得られる半径比率により異なることが以上の説明から理解できる。

【0292】即ち、本装置は、初期磁場50テスラから同500テスラの磁束を良電導性流体(液体金属)の噴霧状粒子または液体金属に凍結させ、四方周辺からレーザ光(パワー密度:1014W/cm2 1018W/cm2 程度)を照射することによる爆縮効果により、半径比で1/100 1/10,000、従って、面積比で1/10,0001/100,000,000の流体収縮させることにより、50テスラ〜500 テスラの初期磁場を1/10,000倍〜1/100,000,000 倍に濃縮させ、50万テスラ〜500 万テスラ〜500 億テスラの超強磁場をパルス的に発生させることができる。

【0293】また、噴霧状粒子の噴射または液体金属の流し込みとレーザ光照射は、機械的、電気的に制御できるので、数KHz〜数10MHzの連続パルス動作を容易に行える。なお、磁場濃縮のためのライナー等の構造物は不要であり、磁場発生に伴う巨大磁気圧力による構造物の破壊はない等の特徴がある。なお、レーザ光源としては強制モード同期による有機色素レーザを用いるのは、この有機色素レーザは、パワー密度の強大なピコパルスレーザを数MHz〜数GHzの繰り返しで実現できるためである。

【0294】本発明による飛翔体の予想主要性能諸元は表2の通りである。

【0295】

【表2】

【0296】また、参考までに空間駆動推進宇宙船の本体の計算式を数式100に、磁束凍結レーザ爆縮エンジンの計算式を数式101にそれぞれ示す(図20及び図21を参照)。

【0297】

【数100】

【0298】

【数101】

【0299】なお、数式100において、R00:空間の曲率(1/m2),B:磁場(Tesla),c:光速値(空間の歪み伝幡速度)(m/s),S:曲がった空間の領域長(m),L:宇宙船機体長(m),N:推進パルス繰り返し周波数(Hz):=1秒間当たりの推進パルス数,αNET :宇宙船が受ける正味の加速度(m/s2),τ:推力有効時間(推進パルス幅)(s) ,t:加速時間(エンジン作動時間)(s) ,M:宇宙船質量(Kg),V:宇宙船速度(m/s),F:宇宙船推力(N)である。

【0300】また、数式101において、ε:推進パルス1サイクル(T=1/N)のレーザエネルギー(J),k:慣性保持パルス数,εs :慣性保持1パルス当たりのレーザ照射エネルギー(J),SD :レーザパワー密度(W/m2),tL :レーザ照射時間(s),A:レーザ照射面積(m2),χ:爆縮半径比(≪1),u:爆縮レーザ光圧(N/m2:=Pa) ,Pu :磁気圧力(N/m2:=Pa),E:1秒当たりの供給エネルギー(J/s :=W):=エンジン供給電力PE(W)である。

【0301】また計算例として、宇宙船の機体長(直径)L=15m、曲がった空間領域S(=3L)=45m、磁場B=800億テスラとした宇宙船の設計値を以下に示す。なおレーザ爆縮エンジンについては検討開始直後であり、あくまでも目安にとどめておきたい。τ=t2 L/c 50ns,t1 S/c 150ns ,t3 =0ns.N=1/t1Max 値を設定し、N=6.7MHz.R005.3 ×10-16(1/m2),α=2146m/s2219G,αNET 36G .Pu 2.5 ×1027Pa ε=10MJ,k=10,tL 0.1Ps ,A=0.0314cm2 ,χ=0.2 ×10-5として、SD 3.2 ×1024W/m2,u=2.7 ×1027Paとなり、u≒Puとなる。E=PE 67TW.エンジン1基の最大推進加速度36G、供給電力67TW。宇宙船推進方向3基エンジンで最大推進加速度108G、供給電力200TWとなる。宇宙船の速度及び推力の制御は、推進パルス繰り返し周波数Nを下げることにより行い、推進加速度を108G36G 1G0Gまで下げることができる。例えば1Gの場合、宇宙船の機体高さL=5m,曲がった空間領域S=L=5m,磁場800億テスラ,N=4.9MHzとして、τ=t2 L/c 17ns,t1 S/c 17ns,t3 170ns ,R005.3 ×10-16 ,α=236m/s2 24G ,αNET =1G ,E=PE4.9TW となる。電力はレーザ照射時間tL 0.01ps(10fS)にすると、いずれの計算例も1/10になる。

【0302】なお、当該推進装置に必要な電力発生のための動力源としては、小型で大電流を取り出せる液体金属MHD発電機(液体金属を作動流体とするMHD発電機)を用い、その熱源に反陽子と陽子との対消滅反応を利用した反粒子消滅反応炉を用いる。

【0303】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の飛翔体の推進装置によれば、飛翔体の推進力は、飛翔体を含む空間領域全体に浸透する重力と等価な体積力(空間歪み力)であり、飛翔体及び飛翔体内部の搭乗員を含む全物質点が同じ力を受け加速されることとなり、慣性力の作用はなく、搭乗員等が破壊されることはない。

【0304】慣性力を理論上消し去る推進方式であり、従って、空中の静止状態から全方向に対する急発進、急停止、直角旋回、ジグザグ旋回及びV字旋回等任意の航法が可能となる。

【0305】また、推進力は重力と等価であるため、得られる最終速度は原理的に光速度の近辺(準光速度)まで可能である。

【0306】更に、本発明の推進装置は、内燃機関ではないので、騒音(プロペラ音、ガス噴射音等)や噴射ガスを発生せず、静かな飛行が可能である。また、航法が安定(空中静止〜低速度〜高速度が任意)しており、爆発物である燃料を積載していないので、安全性が高い。

【0307】加えて、推進力は飛翔体を含む空間領域全体に作用するので、飛翔体外表面の空気も同様に加速されることになり、空力加熱の発生を軽減できる。つまり、空気分子と空気分子同士の摩擦になるだけであり、飛翔体は大気中を高速(秒速数km/s〜数100 km/s)で移動できる。

【0308】以上のことから、宇宙空間を準光速度で航行できる能力と大気中を高速度で任意の飛行パターンで航行できる能力とを併用する種々の優れた効果を期待でき、更に惑星探査等の航行時間短縮(例えば、火星まで片道半日)に大きな効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図1】空間の基本構造の説明図である。

【図2】駆動力としての表面力差の説明図である。

【図3】本発明の一実施例に係る飛翔体の外観を示し、(A)は上面概略断面図、(B)は側面概略断面図である。

【図4】空間歪み推進機構の原理説明図である。

【図5】4基の推進エンジンの配置図である。

【図6】6基又は4基の推進エンジンによる航法説明図であり、(A)は空中静止からの急発進・急停止を示し、(B)は直角旋回飛行を示し、(C)はジグザク飛行を示す。

【図7】地球周辺の空間歪み及びこの空間にある物体Mの移動説明図である。

【図8】地球のような質量体のない宇宙空間で地球周辺の空間と同様な1方向性の空間歪みがある場合の物体Mの移動説明図である。

【図9】本発明の推進原理の説明図である。

【図10】宇宙船を推進させる理想的な空間歪み面の説明図である。

【図11】宇宙船を推進させる実用的な空間歪み面の説明図である。

【図12】宇宙船を推進させる実用的な空間歪み面の説明図である。

【図13】推進エンジンの配置構成と宇宙船の運動性の説明図であり、(A)は6基のエンジンの場合を示し、(B)はエンジンの種類を示し、(C)は4基のエンジンの場合を示す。

【図14】1つの超電導マグネットで形成される空間歪み面の説明図である。

【図15】本発明の推進エンジンの原理的な構造の説明図である。

【図16】本発明の推進エンジンで形成される空間歪み面の説明図である。

【図17】磁束凍結による磁場濃縮概念図であり、(a)は磁束が良電導性流体粒子に凍結した状態図、(b)は外力等の作用で流体粒子が収縮し、これに伴い磁束も収縮した状態図、(c)は流体粒子が更に収縮した状態図である。

【図18】本発明の一実施例に係る強磁場発生装置の原理説明図である。

【図19】本発明の一実施例に係る強磁場発生装置の構成ブロック図である。

【図20】エンジンのON/OFFによる動作状態図である。

【図21】動作パルス説明図である。

【符号の説明】

飛翔体

21〜26 推進エンジン

31 主超電導マグネット

32 補助超電導マグネット

41 ブランケット

42 ノズル

43〜44 超電導マグネット

45〜46 レーザ光源

47 排気ポンプ

48 液体金属貯蔵容器